改めて【チオ】の復習します!

今回は、美容室で使うパーマ液に含まれる還元剤の代表と呼んでも良い、【チオ】について理解を深める内容です!

1.そもそも「チオ」って何?

美容師が言う

「チオでかける」
「チオ系の薬」
「チオの還元力」

という場合、一般的にはチオグリコール酸系の還元剤を指している。

代表的なものが、

チオグリコール酸アンモニウム

です。

英語では Ammonium Thioglycolate、略して ATG と呼ばれます。

化学的には、

チオグリコール酸(TGA)+アンモニア由来のアンモニウムイオン

からなる塩です。

実際、パーマ液ではチオグリコール酸がアンモニウム塩として使用されることが一般的だと報告されています。

ここで大事なのは、

「アンモニアがチオグリコール酸にくっついて、還元力が単純に強くなった」

という理解ではないこと。

ここを理解すると、チオの仕組みがかなり見えてくる。

2.なぜチオグリコール酸をそのまま使わないの?

最大のポイントは、

チオグリコール酸は酸だから。

チオグリコール酸は構造の中に

-COOH

というカルボキシル基を持っています。

酸性条件では、

R-SH

というチオール基も比較的「Hを持った状態」にあります。

ところがアンモニアを加えると、酸塩基反応によってカルボキシル基のHが外れ、

チオグリコール酸 ⇄ チオグリコレート

という状態になります。

ざっくり言えば、

チオグリコール酸
↓ アンモニアで中和
チオグリコレート+アンモニウム

という状態です。

つまりアンモニアを使う大きな意味の一つは、チオグリコール酸を扱いやすい塩の形にすること。

PubChemでもチオグリコール酸アンモニウムは「thioglycolateのアンモニウム塩」とされています。

3.じゃあ、アンモニアは還元剤なの?

ここが美容師として非常に重要。

基本的には違う。

役割を分けると、

チオグリコレート

→ 還元反応を担当

アンモニア

→ アルカリ性を作り、毛髪を膨潤させたり、還元剤が働きやすい状態を作る

という考え方が分かりやすい。

パーマ1剤では、還元剤がシスチン結合を還元すると同時に、アルカリ剤が毛髪を膨潤させて還元剤を毛髪内部へ入りやすくします。

つまり、

チオ=切る側
アンモニア=入りやすくする・働きやすい環境を作る側

と考えるといい。

ただし実際の処方では、チオグリコール酸アンモニウムとして入っているアンモニウムと、処方中の遊離アンモニア・アンモニア水によるアルカリ性を完全に同一視しないことも重要です。

4.なぜ「アンモニア+チオ」が強いパーマに向いているの?

ここが一番美容師的に面白いところ。

パーマで重要なのは、

還元剤がどれだけ強いか

だけではありません。

むしろ、

還元剤が毛髪内部の目的部位まで到達して、シスチン結合に十分作用できるか

が非常に重要。

毛髪表面にはキューティクルがあります。

そこでアルカリ性を利用して毛髪を膨潤させる。

すると、

毛髪が膨潤
↓
薬剤が内部へ移動しやすくなる
↓
チオグリコレートがコルテックスへ到達
↓
シスチン結合を還元
↓
毛髪をロッド上で再形成
↓
2剤で酸化
↓
新しい形で結合を再形成

という流れになります。

だから、

「チオだから強い」

だけでは不十分。

正確には、

チオグリコレートの還元作用+アルカリによる毛髪の膨潤・浸透性+処方全体

によって、強いパーマを作りやすくなるわけです。

5.なぜアルカリ性にするとチオが働きやすいの?

ここは少し化学的に掘り下げます。

チオグリコール酸には、

-SH

というチオール基があります。

この-SHがHを放して、

-S⁻

に近い状態になるほど、還元反応に参加しやすくなります。

つまりアルカリ性にすると、

R-SH ⇄ R-S⁻+H⁺

という平衡が右側に寄りやすくなる。

このチオレート(RS⁻)が、毛髪のシスチン結合

R-S-S-R

に反応していく。

その結果、シスチンのS-S結合が切断され、毛髪内部の構造を動かせるようになります。

研究でも、チオグリコール酸によるパーマ処理では毛髪中のジスルフィド結合が減少し、チオールなどへの変化が確認されています。

6.だから「強いチオ=高濃度」だけではない

美容師としてここはかなり大事。

例えば、

還元剤濃度が高い
+
アルカリが強い
+
pHが高い
+
毛髪が膨潤しやすい

という処方なら、かなり強く作用する可能性があります。

逆に、

チオ濃度が同じ

でも、pH、アルカリ剤、基剤、浸透性、放置時間、温度、毛髪状態などが変われば結果は変わる。

だから、

「この薬はチオ○%だから強い」

だけでは本当の薬剤強度は判断できません。

7.「アンモニアだから強い」も少し違う

ここも美容師が勘違いしやすい。

アンモニアはアルカリ剤なので、毛髪の膨潤や薬剤浸透に関係します。

でも、

アンモニア=還元剤

ではありません。

そして、

アンモニアが多い=必ずチオの還元力が強い

という単純な関係でもない。

むしろ、

還元剤の種類・濃度・pH・アルカリ度・毛髪への浸透性・放置時間

をまとめて考える必要があります。

日本パーマネントウェーブ液工業組合も、1剤について「還元剤」と「アルカリ剤」の役割を分けて説明しています。

8.美容師なら「チオ」をこう理解するといい

一言でまとめるなら、

チオとは、単なる「強い薬」ではなく、チオグリコール酸系の還元剤をアルカリ環境で毛髪内部に作用させ、シスチン結合を還元して形を変えるための薬剤システム。

そして、

チオグリコール酸
↓
酸の状態

アンモニウム塩にする
↓
チオグリコール酸アンモニウム

アルカリ環境
↓
チオールの反応性が高まり、毛髪も膨潤

毛髪内部へ浸透
↓
シスチン結合を還元

ロッドで形を作る
↓
2剤で酸化

という流れ。

だから「チオ」という言葉を聞いたら、

①チオグリコール酸系の還元剤なのか
②アンモニウム塩なのか
③どんなアルカリ環境なのか
④実際にどれくらい還元できる処方なのか

まで考えると、薬剤を見る目が一段上がります。

特に縮毛矯正まで含めるなら、「チオグリコール酸」と「チオグリコール酸アンモニウム」と「アンモニア水」はそれぞれ何が違うのかを理解すると、かなり薬剤設計が見えるようになるよ。

 

SOLANA

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